2009.1 第14号 凹凸地形で工夫した海浜植物の導入試験

緑化樹センター主任研究員 清水

植物の導入方法を自然に学ぶ

 海浜植物の生育している海岸は、砂などの貧栄養の土壌が多く、しかも砂の移動や堆積、塩風、乾燥等、厳しい立地環境にあり、一度消失した植物を新たに生育させることは容易ではありません。しかし、現実には多くの植物が海浜で生育しています。
実際に植物が生育している場所をよく観察すると、実は海岸といっても丘があったりくぼ地があったりと複雑な地形をしています。そこで、海浜植物の導入試験を行うに当たって、地形に変化をつけてみました。

試験の方法

 試験地は北海道北部に位置する日本海沿岸の砂採取跡埋め戻し地に設定しました。埋め戻し地は海から内陸に200mほど入った場所にあり、飛来塩分量は波打ち際(汀線)の27%で、ほぼ樹木生育の限界地でした。埋め戻された土は小傑、砂、粘土からなり、地形
は平坦化されていました(写真1)。
 ここに埋め戻し時と同じ土を用いて、高さ150cni、幅と、長さとも420cmの盛土を180 Cm間隔で2つ造成しました(写真2)。海浜植物の植栽は立地条件の異なる盛±4箇所(①海向き斜面、②盛上上平坦面、③内陸向き斜面、④盛上間平坦地)と⑤開放された平坦地、に行いました。

試験の結果

 土壌が堅く締まっていない盛土斜面(①、③):ハマナス、ハマニンニクのように、地下茎を伸長させるために柔らかい土壌を好む植物の成長が優れており、エソエユウ等他の種でも成長は良かった。しかし、冬期間も地上部が生き残って塩風で枯れやすいミズナラについては、海向き斜面では成長は不良でした(図1)。
 土壌が堅くて塩風が強く当たる盛上上平坦面と開放された平坦面(②、⑤):全ての植物で他の植栽箇所に比べて成長は悪かった。これは塩風の当りが強いとともに土壌が堅く締まっていたためと考えられます。地下茎で増えていくハマニンニクでは、開放平坦地における地表の被覆面積は盛土斜面の10分の1以下でした(写真3、4)。
 土壌が湿って塩風の当たり方が弱い盛上間の平坦地(④):エソゼンテイカ、ノハナショウブ、エソエユウ等の湿った土壌を好む植物の成長が良好でした。また、塩風の影響が最も少ないため、ミズナラ、ハマナスの樹木も成長が良好でした。

北海道治山林道協会 安心・安全で緑豊かな地域を作る...|技術通信

海浜植物導入に適した地形

北海道治山林道協会 安心・安全で緑豊かな地域を作る...|技術通信

海浜植物の導入には、海浜植物それぞれの特性に合った立地条件を作ると生育が良くなることがわかりました。より自然に近い景観の優れた海岸の復元には、単純な平坦地に植栽するよりも凹凸のある地形を作るとより自生海浜植物の再生に効果的です。