2009.7 第15号 技術通信 道立林業試験場発(2)
林業経営部育林科 山田健四
ニセアカシアを駆除するには夏に伐採するのがよい
はじめに
北米原産の外来種であるニセアカシアは,荒廃地に強く成長が早いことから治山緑化に用いられるほか,フジに似た白い花が美しく,蜂蜜の重要な蜜源であるなどの有用な性質を持ち,世界中で広く植栽されている樹木です。一方で,地表近くに張った水平根から発生する根萌芽により隣接する開放地に分布を拡大することや,伐採しても旺盛に萌芽枝を発生して駆除が困難なことなどの性質から,環境省により「要注意外来生物」に指定され,適切な管理手法の開発が求められています。ニセアカシアを伐採する際に一番問題となるのは,その旺盛な萌芽再生能力です。このため,何度も伐採を繰り返したり,伐採後に除草剤を散布したりといった,様々な試みがなされていますが,それぞれに経費や周辺環境への配慮といった問題があります。本報では,ニセアカシアを適切に管理するための伐採方法について,特に伐採時期の違いによる効果を明らかにした結果について紹介します。
伐採時期を変える意義
落葉樹は一般に,秋に養分を樹体や根系に蓄え,春の芽吹きや開花にはその養分を利用することから,伐採時期を変えることにより,萌芽枝が利用できる養分量を変化させ,伐採後の萌芽枝の発生数やその後の成長に影響を与えることができると考えられます。そこで,2004年に美唄市内の2林分において,開葉前で養分が十分に蓄えられている5月,開葉・開花で最もエネルギーを使う6月,そして成長が旺盛な8月の3回に分けてニセアカシアを伐採し,その後の萌芽枝の消長を3生育期間にわたって観察しました。
夏伐採は効果的!
伐根ごとの最も高い萌芽枝の高さ(最高萌芽枝高)は,伐採時期が早いものほど高い結果となり,この傾向は3生育期間を経過した2007年5月時点でも変わりませんでした。2007年5月の調査では,南美唄の8月伐採区および盤の沢のすべての伐採区において,伐根からの萌芽枝が全て枯死した枯死株が顕著に増加しました。枯死の原因は,上木の伐採によって回復した林床植生により,枝高の低い萌芽枝が被陰されたものと考えられます。この結果,2007年5月におけるニセアカシアの再生量の目安である,根萌芽を含む樹高1.3m以上のすべての萌芽枝の材積の合計値(D2H値合計)は,両林分とも8月伐採区で非常に小さい値となりました(図)。2007年5月における南美唄5月伐採区と同8月伐採区の状況(写真)を見ても,この差は明らかです。
以上の結果から,ニセアカシアの駆除伐採は春先よりも盛夏に行う方が効果的であるといえそうです。ただし,8月伐採区では再生量が少なかったとはいえ,南美唄のように再生した萌芽幹が残っている場所では,追加的に繰り返し伐採を行う必要があるかもしれません。また,本報告は美唄市内の2か所という限られた条件の中での結果であるため,今後も伐採事例を増やして検証し,ニセアカシアの効果的な駆除方法について検討していきたいと考えています。
本研究の遂行に当たり,調査地の提供をいただいた三井鉱山株式会社及び三菱マテリアル株式会社,研究費の一部を助成いただいた(社)道路緑化保全協会に感謝します。